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麻の葉文様の起源と意味合い

文様の起源と構造

基本構造

麻の葉文様は、正六角形を基本とした幾何学的なデザインで、大麻の葉に似ていることから、近世に入ってこの名が付けられました NoteWikipedia。正六角形の対角線によってできる六つの正三角形の重心と各頂点を結んでできる星型の文様で、麻の葉をモチーフにした文様ではないので、植物文様のカテゴリーには入りません。

幾何学的特徴

三角形、菱形、方形、多角形、円形などの同じ文様を上下左右に連続させ、規則的に繰り返して一定面積の中に割り付けたものを「割付文様」、あるいは「幾何文様」「幾何学文様」と呼びます 禰豆子の着物で再注目!「麻の葉模様」は、江戸の女子にも大人気だったこと、知ってた? | 和樂web 美の国ニッポンをもっと知る!。点と線で構成された幾何学模様であり、永遠に繰り返される均整のとれた美しさが特徴です。

歴史的発展

古代からの存在

文様自体は古くからあり、平安時代の仏像などにも切金(きりかね)での装飾がみられる 麻の葉文様 – Wikipedia。金箔や銀箔を糸のように細く直線状に切ったものを膠(にかわ)などで貼りつけて文様を表現する「截金(きりかね)技法」による「麻の葉文様」の装飾が見られます。

具体的な古代作例

1220年、京都の「十六弟子立像」や1247年、奈良の「愛染明王像」の衣服に麻の葉文様の一部が描かれています。比較的地位が低い尊像でありましたが、民衆からはしたわれており、「麻の葉文様」が民衆へ普及したことと関係があると言われています。

中国における六角形文様

中国では蒲纹:由阴线交错排列成六角形格子的纹样という六角形の格子状文様が存在し、在汉代较为流行,多见于玉璧(漢代に流行し、玉璧によく見られる)とされています。これは麻の葉文様と類似した六角形を基調とする幾何学文様です。

江戸時代の大流行

歌舞伎を通じた普及

1809年、五代目岩井半四郎が歌舞伎で八百屋お七を演じた際には、麻の葉文様があしらわれた着物が話題となりました 麻の葉文様の魅力: 歴史、縁起、そして無限のバリエーションを探る|よみもの|アンティークブルーパロット京都。これが、江戸の女子たちの間で大流行し、その後の1818年。大阪 嵐璃寛(あらしりかん)が「妹背門松」という芝居で演じた役にも麻の葉文様を採用されて京都、大阪で好まれました。

ファッションの中心へ

浮世絵は江戸時代当時、人々にとっては現代でいうタブロイド誌やファッション誌、アイドルブロマイドのようなものです。皆がこぞって真似をしだし、麻の葉文様は瞬く間に、広まっていきました 【ヘンプ豆知識】幾何学が美しい「麻の葉文様」 – ヘンプ100% 麻の衣 忠兵衛

文化的・宗教的意味

神聖な植物としての麻

伊勢神宮のしめ縄は麻で作られ、毎年「麻布」が献納されます。この神聖な皇室行事の儀式では祭官が「麻布」の衣を着用します。日本では白が清浄、潔白を表し、穢れを払うといわれ、麻にその白さを求め神事に用いられたと説明されています。

成長と魔除けの象徴

麻がまっすぐに伸びることから、成長や健康を願う縁起の良い文様とされています 麻の葉文様の魅力: 歴史、縁起、そして無限のバリエーションを探る|よみもの|アンティークブルーパロット京都。麻は真っすぐに伸び生長が早いことから、麻の葉文様には子どもがすくすくと育つという意味も込められています。さらに柄に継ぎ目がないことから魔が入らないとされ、縁起のいい文様でした 「麻の葉」文様がおしゃれな南部鉄器のフライパン‐平安時代から続く伝統の美しさ – 1848年創業 南部鉄器工房 及富

三角形の魔除け効果

麻の葉模様をよくみると、魔よけの意味がある三角形「鱗文(うろこもん)」の集合模様にみえます 麻の葉模様。三角形にも魔除け、厄除けの意味があり、その集合体の麻の葉は、より強い意味と美しさがあります 麻の葉

産着としての伝統

子どもの健康祈願

子どもの死亡率が高かった時代、子どもが生まれると、女の子には赤、男の子には黄色か浅葱(あさぎ)色の「麻の葉文様」の着物を着せました 禰豆子の着物で再注目!「麻の葉模様」は、江戸の女子にも大人気だったこと、知ってた? | 和樂web 美の国ニッポンをもっと知る!。「麻の葉文様」の産着の習慣には、大人たちの「すくすく健康に大きく育って欲しい!」という子どもの健やかな成長と厄除け、魔除けの祈りが込めてられていたのです 禰豆子の着物で再注目!「麻の葉模様」は、江戸の女子にも大人気だったこと、知ってた? | 和樂web 美の国ニッポンをもっと知る!

多様なバリエーション

文様の展開

「麻の葉繋ぎ」「麻の葉崩し」といった連続したパターンや、絞り文様を取り入れたり、向かい鶴や波模様と組み合わせるなど、多彩な表現が可能です 麻の葉文様の魅力: 歴史、縁起、そして無限のバリエーションを探る|よみもの|アンティークブルーパロット京都。江戸の人々は捻じれ模様も好きで、麻の葉文様がぐにゃぐにゃと捻じれている「捻じれ麻の葉」もある 麻の葉文様 – Wikipedia

絞り染めの技法

「絞り染め」という技法を用いて、「麻の葉文様」を紅色に染めた「麻の葉鹿の子」は、艶やかな女らしさを際立たせる文様として、江戸の女子たちに人気だった。

日本文化ならではの解釈

1. 精神性の重視

中国の六角形文様が主に装飾的機能を重視したのに対し、日本の麻の葉文様は宗教的・精神的意味を強く持ちます。仏教美術との結びつきや、神事における麻の神聖性が文様の意味を深めました。

2. 生活文化への浸透

中国では主に器物や建築装飾に用いられましたが、日本では産着や日常着に広く使用され、人々の生活に密着した文様として発展しました。

3. 成長祈願の象徴化

植物としての麻の成長力を文様に込め、子どもの健やかな成長を願う具体的な用途として定着したのは、日本独特の文化的発展です。

4. ポピュラーカルチャーとの融合

歌舞伎を通じてファッションの流行となり、浮世絵で広まるという、江戸時代のメディア文化と密接に結びついて発展したのも日本特有の現象です。

この麻の葉文様は、幾何学的な美しさと深い文化的意味を併せ持つ、日本文化の精髄を表現した文様といえるでしょう。

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